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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「口賢いやつ、またいらざる弁をふるうか」

「やめましょう、このへんで旗を巻いて」

主従は哄笑する。そしてやがて、杯をとり合うと、小姓の蘭丸までしりぞけて、酒間のはなしは、却ってまじめに、また小声になっていた。

「――して、近ごろ、京都の情勢はどうか。たえず村井民部より使いは通うてまいるが、そちの観たところを聞きたい」

信長は、期待していう。

藤吉郎のいおうとするのも、そこにあるらしい容子であった。

「ちと、座が遠ございまする。殿がお寄りくださるか、てまえが進みましょうか、もすこし間近になりたいもので」

「わしが寄ろう」

と、信長は、銚子や杯と共に上座を降りてすすみ、

「次の間のふすまも閉めい」

と、いいつけた。

藤吉郎が立ってそこを閉めかけると、ふと蘭丸の白い顔が見えた。

「はや、日も暮れてまいりましたから、燭をこれまで持参しておきました」

すぐ、退ってゆく。

明りを内に入れ、あとを閉めて、藤吉郎は信長のすぐ前に坐り直した。

「情勢は相かわらずです。ただこのところ、信玄入京のあてがはずれたため、室町のお館は、失望のいろ濃く見えますが、公方家の依然たる策謀は、いよいよ露骨で、あくまで信長ぎらいで一貫しておりまする」