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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
なだめて、お市の方が、矢柄を取りあげ、静かにまた云い聞かせていた時である。
跫音も荒々しく、
「なんじゃッ、織田ごときが! ……。ついこの頃尾張の片田舎から時を得て、のさばり出た小侍にすぎないッ。信長風情に屈するわしか。浅井の家はすこしちがうぞッ」
聞えわたるような声を放ちながら、どやどやと、二、三の武将をしたがえてはいって来た人がある。いうまでもなく、この深殿へ、そうして無断に来るひとは、浅井長政のほかにはない。
「……オオ、みなこれにいたか」
ほの暗い短檠のあかりにしては、洞然と広すぎるここの一間に、無事な妻子のすがたを見出すと、彼は、やはりどこかでほっとしたように、
「あ……少しくたびれた」
どかと、坐って、すぐ鎧の一部を脱ぎ、うしろの部将たちへ向って、
「その方どもも、すこし休め。……たそがれの様子では、こよいの夜半あたり、敵は夜襲に出て来るかもしれぬ。……今のうち休んでおくがよい」
と、息もあらあらしく云った。
部将たちが立ち去ると、長政の心は、何かほッと息づいた。――戦の中にも、ここでは家庭の父であり良人である自分を、ふと見出したからである。