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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

母の戦だぞ、そなたの役は」

「わ、わかって……おりまする」

「むごい良人と思うであろうな」

憤然と、格天井を仰ぐと、彼女は、子たちを抱えたまま良人のそばへ身をすりよせた。

「……思いません! なんでお恨みなどいたしましょう。……何もかも宿命と観じておりますから」

「ただ宿命というだけでは、おたがい人間、諦めきれるものでない。つるぎを呑むより辛かろうが、武将の妻、もっとはっきり理解をもて。そのうえの覚悟でのうては、まことの覚悟とはいえぬ」

「その理解を、持ちとうございまする。……けれど、女子のあたまでは、自分は母ぞ、と思うのがいっぱいで」

「無理もない。平常、世上の知識も、表むきのことも聞かせず、いきなり解れと申しても。……今は話そう、はっきりと」

「…………」

「夫人。わしはそなたを娶る初めから、そなたを末長く契る妻とは思い得なかった。父久政も、浅井の嫁とはゆるさなかった」

「えッ……なんと仰っしゃいましたか。いまの、いまの仰せは」

「かかる時こそ人は真実を吐くものだ。またとない折、長政はそなたに、心を打ち割ってみせるのじゃ。乱世の武人の表裏と詐謀のむずかしさ、また人間的な苦しさ……。