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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

うごくまい。断じて。

藤吉郎は肚の底でそう独り誓っていた。

目的を達するまでは! と。

「…………」

で、彼は根気よく黙っていた。弁舌の雄も、説く相手による。――こう練れている老将に、ヘタな饒舌は、策を得たものでない。

「……さ。お立ちください。お帰りの御案内いたそう」

三河守は、促した。

藤吉郎は、むッつりと、あらぬほうへ眼をやって、うもすも答えずにいるあいだ、自分で点てた一碗の茶を、鷹揚にひとり飲みほして、それらの道具なども、水屋に退げた後にである。

「いや、勝手ながら、もう少々、ここへ置いておいて下さい」

と、藤吉郎は初めて答えた。

うごかない。

いや、てこでも、うごくまい――と、する顔いろである。

すこし蔑むように、藤掛三河守はいった。

「いつまでおいであっても、むだでござろうに」

「かならずしも、むだではございません」

「この方のいま申したことに二言はない。ここにいて、どうなさるか」

「釜の沸る音を聴いております」

「釜の……。はははは、茶もわきまえぬといわれたお身が」

「いやいや、まったく茶道もなにも弁えはいたさんが……どうにも、これは快い音でござる。