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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「ははは。殿さまが、真顔をなすって。あははは」

「市松、何を笑うか」

「でも。……いえ、そうお聞き遊ばしたなら、さだめし、夫人さまにも、およろこびなさいましょう」

「妻のことをいうたと思うているのか。寧子は二番めじゃ」

「二番めという仰せは?」

「わしのいう第一の恋人とは、母者人のことよ。わからんか」

「あ。左様でしたか」

「わしが窶れ顔などしていたら、苦労性な母者人はすぐ、せいでもよい思い遣りを子になさろう。子の窶れを見て、そう思うたらもう、この新城の壮麗も結構も、女親の胸にはみな苦労のたねとなるのみで、ここに住もうて、心から楽しんでは下さるまい」

「おそれ入りました、そういうお考えとも知らずに……」

市松は、両手をついてから、秀吉のまえの鏡立を片よせて行った。けれど、その市松よりは、秀吉のかたわらに、佩刀を持って、ちょこなんと坐っていた虎之助のほうが、いまの主人のことばを、じっと心から聞き入っていたふうであった。

ふと、秀吉は見て、

「於虎」

「はい」

「そちも会いたかろう。故郷の母に」

「会いたくありません」

「なぜか」

「でも、私はまだ、殿さまのような手功をたてておりませんから」