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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

「城下の百姓町人たちが、きょうのお城入りを祝うとて、きのうから踊り囃子の稽古をしているのでございます」

「いつぞや見たあの踊りか。はてな、小谷から長浜へ移る折の、入城祭りはやったでないか」

「いえ。今日のは、御母堂さまと奥方さまの、お城入りをよろこんででござりまする」

「きょうのわしの歓び。それはわしの一私事としておるが、領民たちまで、そのように歓んでくれておるか」

「かたがた、旅路から着くおふた方の眼をおなぐさめ申さんと、道には砂をまき、戸ごとには花見幕やら軒飾りをして、それはそれは賑やかな由にございます」

「わしも、早く見たいな」

「まだお時刻までには」

「どうしてきょうは、こう午まえの日が長いのであろうか」

「暗いうちからお目ざめでしたものを」

「あ。そうか」

まだ母に会わないうちから、彼はそろそろ子どもッぽくなり始めている。母と妻の駕籠は、もう湖を見ているであろう、もうどの辺りへと、想像していた。

「――間もなく御城下はずれまでお見えでございます」

城門へ先触れの一騎が告げて来る。その頃、彼はもう城門内に駒を立て、家中の面々およそ二、三百人、徒歩もあり騎馬もあり、粛然と、隊伍を作って待っていた。