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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
が、彼は無事に、岐阜城へ帰った。それから約一月余りを経た六月の半ばだった。
「宿直ッ。宿直の者ッ」
まだ、短夜も明けていないのに、彼の寝所から、呼び立てる声がした。稲葉山から長良川の空をかけて、頻りと、時鳥の啼く四更の頃であった。
夜半でも、不意に、むっくと寝床のうえに起き直って、思いもよらぬ命令を下すことがままある。
信長の宿直衆たる者は、それに馴れていたが、時には油断へ水をかけられて、うろたえた態を殿に見られる場合がないでもない。
「はッ、――何ぞお召し?」
と、今は早かった。
「軍議をひらく。今からだ。即刻集まるように、信盛に計らえと申せ」
信長は、もう寝所を出てゆく。あわただしく、小姓や近習の足音が追う。
夜半か、明け方か、眠たげな近習の頭にはよく分らない。まだ暗いことは確かで、外には星が鮮らかだ。
「ただ今、燭を灯します。お待ちください」
近習は、狼狽していう。が信長はもう裸体になって、湯殿にはいっていた。そして旺んに水を浴び、体を拭きこすっている。
ここよりは、表方の狼狽はもっとひどい。城内には、佐久間信盛、坂井右近、木下藤吉郎などいたが、その他の諸将は多く城下を固めていた。