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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

(何の何の、そんな小さい意味ではない。信長公は将来いよいよ中国から九州、九州から海外へまでも、御雄飛なさろうというお気もちがある。それには、関東以北を、徳川殿の手にゆだねて、後顧の憂いなく、西へも南へも進出できる構えをまず立てねばならぬ。そうした御談合などもぽつぽつ運んでいるにちがいないよ)

等、等、等。庶民たちの臆測にも、時によって、ばかにならない含蓄がある。

実をいえば、家康の参向は、信長にとって、折から、出先の客、というものであった。

これより前に、秀吉との打合わせもあって、彼は近日、自身中国へ出馬し、中国もまた甲州のごとく、一挙に席巻し、一気に統治の実をあげてしまおうと、息信忠もつれてゆく予定で安土へ呼び、今や出陣の準備に忙しい最中であったのである。

――にもかかわらず。

ひとたび安土の大賓として家康を待つや、それらの大事も抛って、心から客を迎え、また全家中の臣もことごとく、その接待のために用いて、

「最善をつくせよ。お客をして寸毫の不興もあらしむるな」

と、ほとんど軍令と異らない意気をもっていいつけた。

宿舎の結構、調度の善美、朝暮の佳酒珍膳など、もちろんのことだが、信長が家康にうけてもらいたいものは、やはり市井人の長屋交際とか、田舎人の炉辺の馳走とも違わない、その「物」