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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
――が、家康は、かくまで自分をなぐさめてくれる信長以下、接待役の丹羽長秀、堀久太郎、菅屋九右衛門などの真心に無上な感謝を抱きながらも、時折、ふと物足らないものを覚えて、ついそれを座談のうちに信長へ質してしまった。
「御馳走役として、初めから私へ附けおかれた日向殿(光秀)にはいかが致されたか。きょうも見えず、きのうの御能拝見にも見うけず、おとといも姿を見なかったようにぞんずるが……?」
家康の問いに、信長は、
「ああ、光秀のことをお訊ねであるか。彼は、都合によって、十五日の夜、坂本へ帰城いたした。……そうそう、にわかのこととて、御宿所へ、挨拶に参じるいとまもなく、安土を退去いたしたものとみゆる」
至極すずやかなのだ。そう答える信長の眉にも容子にも、ほとんど、何らの特殊的な感情といったようなものはあらわれていない。
実のところ家康はすこし心配もしていたのである。巷間、噂まちまちで、変な揣摩臆測も行われているからだった。しかし今、信長のあっさりした返辞やこだわりのない姿を見ては、巷の取沙汰はすべて無用な思い煩いに過ぎないものと否定された。また、そうあるべき筈とも彼の常識で考えられた。