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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

「かようにか」

と、光秀は、顔から頭に巻いている布を一そう深くつつみなおして、ほんの眉と唇元だけを見せて振り向いた。

「身装はお粗末、鞍もただの武者用に過ぎない物。これなれば誰が仰いでも、惟任光秀様とは思いも寄りますまい」

「源右、そちも怠るな。余り慇懃に侍きおると、それだけでも怪しまれようぞ」

「ははは。いかにも、そこまでは気がつきませんでした。これからは無造作にいたしまする。無礼をお咎め下さいますな」

つい両三年ほど前からやっと仮屋普請の軒並みが建ち始めて、やや旧観の坂本宿を復活して来たばかりの街道を駈けぬけて、延暦寺道の登りに向いかけた頃、ようやくうしろの湖水に、朝の陽が耀やきはじめた。

「途中、乗りすてたお馬は、いかが致しておきましょう」

「日吉神社のあたりには、仮御社も建ちかけておるという。その辺りには、農家もあろう。さなくば、日吉における工匠にでも預けて参ればよろしかろう」

「や……。たれか後ろの方で呼ぶ声がいたしはしませぬか」

「追うて来た者があるとすれば、それはかならず左馬介光春であろう。光春はきのうわしの微行を止めたい顔しておった」

「温順誠実、稀に見るお人でござります。