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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
「黄母衣の者、山口銑蔵ですッ」
「同じく、松江伝介。ただ今もどりました」
と、番の者へいう大声にも息を喘いで、こんどは二人同音に、
「甲州御陣へお使いして、今日帰着。通りますッ」
と、どなる。
番の将士がわらわらと出て来てふたりの側へ寄り集まった。何事かと思うと、たちまち一人の将は、
「やあ、御苦労。御大儀」
と、ふたりの肩をたたいてねぎらい、その部下たちは、馬を取って、内へ曳き入れ、また使者の袖や背の埃を払ってやるのもあるし、汗拭を与えて宥るもあるし、口々に、
「お早いことで」
「遠国から一息に、大変だったでしょう」
「さあ、あれにて、湯なと召し上がれ」
と、その労を慰めた。
だが、使者は、髪なで直すと、すぐ足を早めて、
「一刻もはやく、君前におこたえをすまさねば」
と、馬をそこに捨てて、もう足は駈けていた。
秀吉はそのとき、岡山城の本丸の一室で、ことし元服したばかりの宇喜多直家の子秀家と共に、その秀家の妹たちから招かれて、雛のお客になって遊んでいた。
八郎という幼名を、秀吉から名をもらって、秀家と改め、加冠したのはついこのあいだである。秀吉はこの遺子たちを遺して死んだ直家の心を思いやって、わが子のように、日常左右においていた。