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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

(このように夜もすがら百韻に興じ明かしたに相違ございません。日向どのの歌でも、後になって見ればこそ、この時、逆意の兆しすでにありと、察しることもできましょうが、虚心風吟の席、誰があんな大事を予知することができましょう。たとえば明智家の家中すら大部分は本能寺の朝まで、日向どのの胸の中は知らなかったではございませんか)

と、縷々、弁証して、巻は秀吉の手もとへ差し出したままとなったので、以後の伝来は不明になったものという。

すべて、当夜のことは、秘中の秘とされたものか、謎が多い。

紹巴が秀吉に差し出した巻には、光秀の発句、

「――天が下知る」を「天が下なる」と書き直してあったというが、これもどうであろうか。

また、光秀が、苦吟のうちに、粽の皮を剥かずに口へ入れたとか、或いは、紹巴へ向って、

(本能寺の堀は、浅きか深きか)

と訊ねたところ、紹巴が、

(あら勿体なし)

と答えたとか、いかにも真しやかではあるが、これらも乱後の噂にすぎまい。一日にして天下の相貌を一変させた大乱であったから、あとの噂は真偽も紛々と一しきり巷雀を賑わしたにちがいない。同時に紹巴は、彼こそ未然に光秀の計画を知っていた唯一人だ――という嫌疑を一時濃厚にかけられたであろうことも想像するに難くない。