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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

「荷駄? ……むむ、あのことか。いや先発させるのは、皆までには及ぶまい。一部でいい」

そこへ、ひょこりと、実にひょこりとした姿で――光春とともに今日着いたばかりの叔父長閑斎がここを覗いて、

「おや、おりませんな。坂本の殿には、どこへ行かれたか。はて何処に?」

と、きょろきょろ見まわした。いつもながら腹の立つほど陽気で楽天顔をしている老人だった。

出陣の間際であろうと、主君や家中にどんな心配があろうと、いつも変らないおひゃらくな老人よ――と観られて、本丸の諸将からは、一箇の無用人視されている明智長閑斎も、ひとたび向きをかえて、ひょこひょこ奥曲輪の局へ顔をあらわすと、ここでは絶対的な人気で、女房たちから沢山な和子とそのお相手の童まで寄ってたかって、

「オオ、おひゃらく様がお越しなされた」

「おひゃらく様。いつお見え」

と、起っても、坐っても彼のまわりから嬉々たる声と茶目が離れないのであった。

「おひゃらく様。今夜はお泊り?」

「おひゃらく様。御飯はまだ?」

「おひゃらく様。お茶を召せ」

「おひゃらく様。抱いてえ」

「お歌を謡って聞かせてえ」

「踊って見せていの」

膝にのる。