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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

――何と、そこらの若い方々にはどうじゃ」

すぐ左馬介光春が唱えた。

「ことわざにも、天知る地知る我知る人知る、と申すたとえもあるに、悉く殿の股肱とはいえかく大勢の中において、いったんお口にお出し遊ばされた似上は、何で今のおことばをふたたび世に包めましょうや。――さもあらば何の評議や要り申さん。ただ驀しぐらの道ひとつ。斎藤どのならずとも、死に遅れはせぬ。のう各※(二の字点、1-2-22)」

異口同音に、物頭たちは、おうっと答えた。おうっと一声にいう以外、ことばを知らないような感情の閃光が、面々の眸に見えた、ひッ吊れた唇に見えた、膨らんだ鼻腔に見えた、また呼吸に見えた、打ち顫える手脚に見えた。

「よしっ」

光秀が床几を立つと、人々もその感動に乗って身をゆるがした。重臣たちは、出陣の吉例として口々に、

「目出度き御思し召しを立たせられ、事成就は必定にござりまする。室町家累代御信心浅からぬ当八幡宮におかれても、御願をおききいれあらんこと、疑いもありませぬ」

と、賀を述べた。

四方田政孝は、

「はや、酉の刻」

と、空を仰いで、発足の心支度を人々へうながしながら、

「これよりは、野路山路、およそ京まで五里、おそくもほのぼの明けには、本能寺をひた巻きになし得る。