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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
所詮は覚悟のときか。――とする二つのものも、彼の脳裡には闘っていたであろう。
枕をならべて討死した扈従の面々の骸をあわれと見やりながら、ついにそれらの者の死を生かし得ない刻々に取り巻かれて、信長もついに、
「今は」
と、戦うを休め、蘭丸を外において、そこの一室へ退いたのであった。
「――内で、信長の声が聞えたら、信長が自害をとげたものと思え。空骸にはすぐ襖を積み火を加えよ。それまで敵をここへ踏み入らすな」
蘭丸へ向って、信長はこう告げてある。
杉戸の口は固い。四方の障壁にはまだ恙ない金碧の絵画が眺められる。どこからともなく薄煙は流れ入るが、火焔が伝わって来るには微かな遑がありそうである。
――死に就くのだ。あわてるには及ばない。
誰か自分へいっているような心地がする。そこへ入るやいな、彼は四囲の熱気よりも喉の渇を焦けるように思った。そして崩るる如く、座敷の中央に坐りかけたが、思い直してすぐ一段高い長四畳ほどの床の間へ坐した。下は平常、臣下の坐るところと限られていたからである。
一杯の水を喉へ下ろしたという仮想を持って、彼は慥と精神を丹田に落着けるべく努めた。