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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
やがて一纒めにされて、明智勢の手で拉し去られた女たちの中には、阿能局なる女性はいなかった。ほとんど奥仕えの侍女や雑婢たちに過ぎない。それゆえに、阿能局なる女性が信長の側にいたかいないかすら疑問視された。当時のうわさはそれを悼み合っても、名は伝説に付されて証すべきものも後にない。
滑稽なる道化者が、この中で独りその愕きを慎みなく踊って見せたのは皮肉である。それは信長の愛僕であった例の黒奴の黒助であった。彼は弥助という日本名までもらっていたが、日本の武将と武将の変乱に殉じる理由は毛頭ないし、当人には何が何だか分らない出来事にちがいない。何処をどう逃げたか、横ッ飛びに駈けて、近くの南蛮寺へ飛びこんで行った。
折ふし師父カーリオンも、そのほかのばてれんも、その朝の鐘や祈祷もわすれ果てて、みな二階の露台に立ち並び、本能寺の火事を見物していたところだった。すぐ門前の往来を駈ける騎馬武者や避難する貧民の群れなども、南蛮風な柵の外に影絵のように眺められた。
例外な存在者としては、ほかにもう一名あった。婦女子でもない、外国人でもない、堂々たる男子である。
昨夜、本能寺に泊った客、博多の神谷宗湛だった。