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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

ふと、宗湛の姿を見ると、いきなり大声で先から云った。

「や。驚いたじゃろ、宗湛どの」

「いや、驚きましたよ。えらい所へ泊りあわせて」

「まったく、えらいことになったの。天下はどうなるか、ちょっと先が知れなくなった」

「もうご存じでしたか」

「いま知ったのじゃ。里村紹巴から使いをよこしてくれたので」

と、紹巴の文を出して見せた。

「して、御主人には、これからどちらへ?」

「泉州まで行きます」

「御本宅へ」

「いや、ちと……」

と、四郎次郎は云い濁しながら、よほど先を急ぐとみえてもう立ちかけた。

宗湛は携えていた遠浦帰帆之図の箱をそこへさし置いて、

「ご迷惑でございましょうが、これをしばしお宅へ預かっておいて下さいませぬか。実は私もこれから中国まで急に下りたいと思いますので」

「ほ、中国へ」

四郎次郎はあいての顔を見た。

にこと、うなずいて、

「ええ、私は中国へ急ぎます。あなたは泉州まで。――そこまで御一緒に出かけましょうか」

家の者に草鞋を乞うて、宗湛もすぐそこで旅装をととのえた。

徳川家康は、その後、京都大坂を経て、いまは泉州附近に滞留中と聞えている。茶屋四郎次郎は平常から家康を将来の人と見て接近し、常に何くれとなくその恩顧もうけていた。