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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
敵味方おたがいに、かつて安土に在る日には、顔も見知りあい、友の交わりをなしていた仲の者も多い。それだけになお、この戦いは切っ先から火を降らし、槍を折り太刀をくだき、まさに、肉親に怒る肉親の格闘のごとき、凄まじいものを現出した。
明智光忠は、左の肩のあたりに、一すじ矢を負った。駈けよる郎党に、矢を抜かせながらも、混戦中の味方を声もひしげるほど、励ましていると、猪のように味方を掻き分けて来た一名の勇士が、
「日向の甥よな」
と、いきなり突いて来た。
深股を突かれたので、横ざまに倒れた。二番目の槍は、顔へむかって来た。その千段のあたりをつかんで、刎ね起きようとしたとき、彼の旗本が、駈けあつまって、その敵を滅茶滅茶に斬り伏せた。
自分の身から血があふれ、敵の血も頭から浴びてしまったので、光忠は全身紅になってしまった。気がつくと、部下の兵は、自分の足をもち、頭をささえて、どんどん陣外へ向って駈けてゆくので、
「どこへ連れてゆくかっ。わしをどこへ運ぶかっ」
と、叫びつづけた。
従いて来る二、三の旗本たちが、口をそろえて、
「お気をたしかにお怺えください。傷は浅うございます」