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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

「どうなすった?」

紹巴は案じていたので、彼の顔を見るとすぐ訊ねた。道三はべつだん、どうという容子もなく、

「帰ったよ」

と、いった。

けれど、それから間もなく紹巴が辞しかけると、彼はにわかに、

「お頼みがあるが」

と、声をひそめた。

「何ですか」

「実は、さきほど明智衆が調べに来たとき、わしにも胸のうちに弱味があった。というのは、この家のうちに負傷者でもない落人がひとり匿まってある。彼らが出直して来たときは見出されるかも知れぬ。すまぬが、一時お宅へお供申し上げて、適当な頃、どこかへお隠しして下さらぬか」

「誰ですか、その落人とは」

「承知してくれるなら打ち明けるが」

「もとよりこの紹巴とて信長公の御恩顧にあずかって参った者。またあなたという友を裏切るわけもない」

道三は耳をつけて囁いた。

「……信長公の御舎弟、あの源五郎どのだよ」

「…………」

紹巴は目をまるくしたが、だまって頷いた。そして帰る折には、台所門からひとりの男を連れて出て行った。男は医者仲間の恰好を作っていたが、織田源五郎長益なることは、見る者が見れば分ったであろう。

たそがれ迫る頃おい、さきの残党狩りの部将山部主税は、果たして、ふたたび門を叩いた。