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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
あわてふためいて、
「北之門だ。いや水門だ」
と、右往左往する混乱ぶりが闇のなかにもよくわかる。
虎之助は、その片鎌の槍をしごいて、敵兵二、三名を引っかけた。
うしろから、続いて来るものがある。頻りに、敵を斬って自分のあとについてくる。
振り向いているいとまはないが、虎之助は心のうちで、
(覚兵衛だな)
と、知っていた。
飯田覚兵衛という家来は、彼が十七のときに召し抱えたものである。その頃、長浜の城で木村大膳の手に属し、主人秀吉から初めて三百七十石の禄をもらったとき、虎之助はそのうち百石を割いて、山城八幡村から一名の浪人をよんで抱えた。それが飯田覚兵衛だった。
(まだ幾人もの郎党をお持ちにならなければならないのに、三百七十石のうち、てまえ一人がその三分の一も戴いてしまっては)
と、覚兵衛はひどく迷惑がったが、虎之助は、
(いや、その十倍も百倍も与えなければ、おまえほどの男前の者に、主人顔はできない。小身のうちは、それだけでゆるしておけ)
と、ほとんど長上に対するような礼をもって抱えていた。
(この人のためには)
と、覚兵衛が誓っていたことは無言のうちにもあらわれていた。