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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
雨こそはいま、この戦場を決定づけていた。秀吉の作戦は、その設計どおり、全面積約百八十八町歩にわたる渺茫の泥湖を作りあげていた。
孤城、高松の城は、その大湖沼のなかに、ぽつねんと水漬いている。はるかその附近に、禿頭病者の髪の毛の如く見えるものは、森であり並木であり、ところどころの木々だった。
城下の民家もわずかに屋根だけを水面にとどめていた。低地の農家などはすでにその屋根すら現わしていない。分解された無数の木材は濁流のままうごき出して、この大湖沼の周囲を浮游していた。
流木の迅さを見てもわかるとおり、一夜にして出現したこの人工の泥湖は、いまなお刻々水嵩を増している。足守川と長良川の二川を合したものが、どうどうと注ぎ込まれているのである。一見、黄濁のさざなみはただ満々と静止しているかに見えるが、水際の渚を少し見ていると、見ている間にも一寸二寸と、周囲の岸が侵されてゆくのもわかる程だった。
「きょうは暢気者がおるぞ。――あれを見ろ。そち達と似合いの暢気者が」
秀吉は馬の背から、うしろにいる小姓たちの一組へ云った。
――どこに?
と、問いたげな顔をして、小姓たちは皆、馬上の主人が指す方を見た。