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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁
それとこの中国において、わが羽柴軍が、ふかく民心を得た証拠とも申されましょう」
「…………」
足もとの声をそら耳にして、秀吉の眼はただ下の市の賑いに見とれている。ひそかに彼は、主君信長に従って赴いた北陸や伊勢の陣を思いくらべていた。
ひとたび、信長の征馬行くところは、秋霜の軍令と、罰殺の徹底に、草木も枯れる概がある。ために、信長その人について、深い理解をもち得ない敵国の民衆は、織田軍と聞けば、涙も仮借もないものと一途に怖れおののいて、その幕営をめぐって市が立つどころか、求めても、人は逃げてしまうし、捜しても、物資は地下に蔵されてしまう。
秀吉は多年、それを見て、それに倣うことを避けていた。また彼の性格からも、信長のようにはできなかった。
まもなく秀吉のすがたは市のなかを歩いていた。もちろん微行して。
旅芸人の一群が、鄙びた曲楽にあわせ、刀玉取という曲芸を演じている。ここには戦場の陰影も恐怖もなく、無数な顔がただ々としてそれを見ている。
秀吉は見物人の喝采している旅芸人の手元よりは、べつな方へ眼を逸らしていた。その視線をうけているのをまだ気づかずに、これも頻りに芸人の刀玉取に見恍れながらにこにこしていた若い旅支度の商人風な男がある。