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めいあん
明暗
線上閱讀夏目 漱石《明暗(めいあん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 322,590 字 · 645 頁
五十八
五十八
彼女は枕の上で一時を聴いた。二時も聴いた。それから何時だか分らない朝の光で眼を覚ました。雨戸の隙間から差し込んで来るその光は、明らかに例もより寝過ごした事を彼女に物語っていた。
彼女はその光で枕元に取り散らされた昨夕の衣裳を見た。上着と下着と長襦袢と重なり合って、すぽりと脱ぎ捨てられたまま、畳の上に崩れているので、そこには上下裏表の、しだらなく一度に入り乱れた色の塊りがあるだけであった。その色の塊りの下から、細長く折目の付いた端を出した金糸入りの檜扇模様の帯は、彼女の手の届く距離まで延びていた。
彼女はこの乱雑な有様を、いささか呆れた眼で眺めた。これがかねてから、几帳面を女徳の一つと心がけて来た自分の所作かと思うと、少しあさましいような心持にもなった。津田に嫁いで以後、かつてこんな不体裁を夫に見せた覚のない彼女は、その夫が今自分と同じ室の中に寝ていないのを見て、ほっと一息した。
だらしのないのは着物の事ばかりではなかった。もし夫が入院しないで、例もの通り宅にいたならば、たといどんなに夜更しをしようとも、こう遅くまで、気を許して寝ているはずがないと思った彼女は、眼が覚めると共に跳ね起きなかった自分を、どうしても怠けものとして軽蔑しない訳に行かなかった。