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めいあん
明暗
線上閱讀夏目 漱石《明暗(めいあん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 322,590 字 · 645 頁
百八十二
「宅に関さんという方がおいでだろう」
今朝給仕をしたのと同じ下女は笑い出した。
「関さんが先刻お話した奥さんの事ですよ」
「そうか。じゃその奥さんでいいから、これを持って行って上げてくれ。そうしてね、もしお差支えがなければちょっとお目にかかりたいって」
「へえ」
下女はすぐ果物籃を提げて廊下へ出た。
百八十二
返事を待ち受ける間の津田は居据りの悪い置物のように落ちつかなかった。ことにすぐ帰って来べきはずの下女が思った通りすぐ帰って来ないので、彼はなおの事心を遣った。
「まさか断るんじゃあるまいな」
彼が吉川夫人の名を利用したのは、すでに万一を顧慮したからであった。夫人とそうして彼女の見舞品、この二つは、それを届ける津田に対して、清子の束縛を解く好い方便に違なかった。単に彼と応接する煩わしさ、もしくはそれから起り得る嫌疑を避けようとするのが彼女の当体であったにしたところで、果物籃の礼はそれを持って来た本人に会って云うのが、順であった。誰がどう考えても無理のない名案を工夫したと信ずるだけに、下女の遅いのを一層苦にしなければならなかった彼は、ふかしかけた煙草を捨てて、縁側へ出たり、何のためとも知れず、黙って池の中を動いている緋鯉を眺めたり、そこへしゃがんで、軒下に寝ている犬の鼻面へ手を延ばして見たりした。