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めいあん

明暗

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《明暗(めいあん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 322,590 字 · 645 頁

青空文庫

九十一

「ええ」

お延はまだ後があるだろうという様子を見せた。お時は果して話をそこで切り上げなかった。

「奥さま、あの旦那様が、帰ったらよく奥さまにそう云えとおっしゃいました」

「なんと」

「あの小林って奴は何をいうか分らない奴だ、ことに酔うとあぶない男だ。だから、あいつが何を云ってもけっして取り合っちゃいけない。まあみんな嘘だと思っていれば間違はないんだからって」

「そう」

お延はこれ以上何も云う気にならなかった。お時は一人でげらげら笑った。

「堀の奥さまも傍で笑っていらっしゃいました」

お延は始めて津田の妹が今朝病院へ見舞に来ていた事を知った。

九十一

お延より一つ年上のその妹は、もう二人の子持であった。長男はすでに四年前に生れていた。単に母であるという事実が、彼女の自覚を呼び醒ますには充分であった。彼女の心は四年以来いつでも母であった。母でない日はただの一日もなかった。

彼女の夫は道楽ものであった。そうして道楽ものによく見受けられる寛大の気性を具えていた。自分が自由に遊び廻る代りに、細君にもむずかしい顔を見せない、と云ってむやみに可愛がりもしない。これが彼のお秀に対する態度であった。