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がくせいものがたり
楽聖物語
野村 あらえびす
線上閱讀野村 あらえびす《楽聖物語(がくせいものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 193,667 字 · 381 頁
難聴の恐怖を征服
ベートーヴェンはナポレオンの没落を予言し得るはずはない。おそらく第三交響曲の第二楽章として書いた、「勝利の悲哀」とも言うべき葬行曲が、偶然ナポレオンの没落という事実と対応したのであろう。
ベートーヴェンの傲岸さは数限りなく逸話を持っている。が、その性格の底流を成すものは、人並すぐれた「人間愛」であり、人なつかしさであったということも見逃してはいけない。ベートーヴェンの伝記者は、彼が友達好きであり、淋しがり屋であり、そして愛情の豊かな人間であったと言っている。その淋しがり屋の友達好きが、何故に孤独の穀の中に潜まって、世間を白眼で見なければならなかったか。それは、音楽家としては致命的な疾患、――彼の耳疾が高じた結果であったことは言うまでもない。
難聴の恐怖を征服
音楽家が聴覚を失うということは、想像を絶する恐怖である。ベートーヴェンの耳疾は二十歳を越して間もなく徴候を現し、二十七、八歳の時はもはや隠すことの出来ない状態となり、三十四歳の時はピアノの弾奏を断念し、三十八歳の時はほとんど耳が聴こえない状態になってしまった。
平常人より良い聴官を持っていなければならぬ音楽家が、次第に耳が遠くなりつつあることを発見し、それを承服しなければならないということは、五分試し一寸試しの虐殺に逢うようなものである。