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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁

青空文庫

「米谷どのに頼むとしよう」

柴田外記は頼むに足る人だ。自分に対しては好感をもっていないらしい、自分が一ノ関に推されて国老になった、ということで誤解している。それは涌谷が示唆したものであるし、甲斐を一ノ関の与党であるとみせるための工作であったが、――しかし外記ほどの人物なら、理を尽して話せばわかってくれるであろう。七十郎に構うな、と書いてやろう、いま家中に紛争を起こしては大事になる、七十郎にはとりあうな、という意味を書き送ろう。甲斐はそう思い、すぐに手紙を書きはじめた。

甲斐が柴田外記に手紙を出してから、まだ十日と経たぬうちに、「席次の争い」は一転した。

――これはもはや席次の問題ではない。

と国老の側でひらき直った。

もちろん兵部宗勝が主唱者であるが、事情を聞いて田村右京も怒り、柴田外記は当事者として堪忍の緒を切った。七十郎は伊東の一族で、采女の後見をしているが、伊達家の直臣ではない。処士の分際として国老を問責するのは無礼でもあり、その仕方は僣上すぎる、というのである。

――こういう者を捨てておいては、国老の威令が行われない。

厳罰にすべきである、という激しい空気になって来た。