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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
「いけないだろうね」
「それから、ええと」とかよは云った、「それから若い男の人のことをなあこっていうし、女の人のことは名の下へあねっていうんですって、かよならかよあねっていうふうに」
「では私はかずえなあこか」
「いやだ、お父さま、なあこは若い男の人でしょ」とかよは訂正した、「それから、ええと、子供はみんな自分たちのことをおんだらって云って、女の子もそう云うんですって」
おくみが肴を持ってはいって来た。
「またお饒舌りね」とおくみが云った、「お父さまがいらっしゃると、なにもかもお留守になるのね、あなたは、清書きはできたんですか」
「はい、できました」と云って、かよは机のほうへ向き直った、「いまお父さまの名前を書いているところなのよ」
「いたずら書きはいけないでしょう」
おくみは焙り焼きにした山鳩の皿を、甲斐の膳の上に置き、銚子に触ってみて、まださめていないことを慥かめてから、甲斐に酌をした。おくみはそうしながら、手習いのときには手習いだけ、いたずら書きをしてはいけないと、お師匠さまが仰しゃったでしょう、とかよに向かって云った。
「お父さまの名前を書いていたのよ」