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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁

青空文庫

雅楽頭は話し終ってから、四人の意見を聞いた。忠挙がまず同意し、三人の老職も同意であると答えた。

「よし、それできまった」と雅楽頭は頷いた、「いつやるかはおれが合図をするが、仕手には誰がよいか」

高須隼人が忠挙に云った、「太田弥兵衛はいかがでしょうか」

「太田と石田だな」と忠挙が云った、「石田伊右衛門と弥兵衛なら仕損ずることはあるまい」

「いや、人数は五人だ」と雅楽頭が云った、「一人に対して一人でやれ、迅速に、しかも断じて仕損じてはならぬ」

そこで五人の仕手が選ばれた。

「庭先にも人数を伏せよう」と忠挙が三人に云った、「玄関はおれが引受ける」

「若殿のお手を煩わすのはいかがと存じますが」

「いや、玄関はおれだ」と忠挙が云った、「かれらの供は少なくないだろうし、仙台の人間はいざとなると手強いそうだ、玄関はおれが出て押える」

「それがいいだろう」と雅楽頭が云った、「では板倉へ使者をやれ」

同じとき伊達遠州邸では、接待の一と間で安芸と甲斐とが話していた。襖を明け放ち、人は遠ざけてあるが、どちらも殆んど囁くように声をひそめていた。

「しかし」と安芸が訝しそうに問い返した、「いつか船岡は、久世侯も幕府閣老の一人だ、と云ったように思うが」