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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
「申しました、いまでもその点に変りはありませんし、久世侯を信じているわけでもございません」と甲斐が答えた、「逢春門院の御助言もかなわぬと聞きまして、これは敵の帷幄へ一と矢射こむほかはないと考え、それには久世侯がもっともよしと思ったのです」
安芸は遠くを見るような眼つきをし、静かに頷いて云った、「うん、侯にその責任があることは覚えている」
「私はそれを久世侯に申しました、小石川の普請小屋からひそかに松山(故茂庭周防)を呼びだしたこと、六十万石分割の密約について忠告されたこと、それがこのたびの紛争の根となったことなど、すべてをあからさまに申しました」
「まず、まず、ます」と安芸は嘆賞するように、眼を細めて甲斐を見た、「それは一番槍、一番乗りにまさるお手柄だ、侯はさぞかし怒られたことであろう」
甲斐はそっと、片方の手をひるがえした。安芸はそのようすを見まもりながら、斬られる覚悟でいったな、ということを察した。
「激怒されると思っていたのですが」と甲斐は答えた、「心の中は知らず、その証文を持って評定へ出ろ、評定の席で会おうと云われました」
「首尾はどうあると思う」