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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
「風呂をつかって休め、そのあいだに手紙を読んでおく、話しはあとで聞こう」
平六が去ってからも、甲斐はやや暫くのあいだ、文箱を持ったまま、じっと坐っていた。
「――七十郎が死罪」と彼は口の中で呟いた。
甲斐の唇の片方が、ひきつるように歪み、ついで、その表情が、青銅の仮面でもあるかのように、生気を失って硬ばった。
伊東一族に対する裁決には、甲斐も国老として加判していた。采女は逼塞、七十郎は寺池(伊達式部)へ預け、ということであった。両後見のうち兵部ひとりは強硬で、采女も七十郎も死罪にすべきである、と主張したが、田村右京が珍らしくあとへひかず、席次の事は国老にも誤りがあった、という理由で、結局は「逼塞」と「預け者」ということにおちついたのであった。
この裁決は、茂庭主水から申し渡す、という報告が来たのは、三月末のことで、甲斐はいちおうほっとした。七十郎がおとなしく受ければ、これでおさまる、どうかおとなしく受けてくれ、と甲斐は思った。すると追っかけて、七十郎と采女が捕えられて仙台へ護送された、という急報が来た。
――やっぱりそうか。
七十郎は裁決に服さなかったのだろう。