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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 頁
甲斐にもそんな予感があった、さればこそ、おとなしく受けてくれ、とねがったのであるが、しかし、それにしても捕縛とか護送とかいうのはどうしたことだ。
――七十郎はなにをしたのだ。
甲斐は次の知らせを待った。
続いて来た急報はやや詳しく、「七十郎と采女が兵部を暗殺しようとした」ということが書いてあった。その計画は七十郎と里見十左衛門が、青根の宿で相談し、七十郎が采女を説き伏せた。だが、青根へ供をした鷺坂靱負が、ひそかにこれを聞き取り、奥山出雲と合議のうえ、二人が出立する間際に、家従が力をあわせて襲いかかった。七十郎は武芸達者であり、なにをするかわからないので、手取り足取り「縛りあげてしまった」という。
甲斐はそれを読んだとき、胸をひきしぼられるように思った。
――あの七十郎が。
刀槍の腕では第一流といわれ、事実それだけの心得のあった彼。明るく濶達で、わがままいっぱいにふるまいながら、なお家中の人たちに愛され、尊敬されていた七十郎。それが、家従のために取って押えられ、繩をかけられたという。
――どんな気持だったろう、どんなに口惜しかったろう。
甲斐には、手で触れるように、七十郎の無念さがわかった。