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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁
知ってるだけの事を言うが宜い」
平次の言葉は条理を尽します。
「若い男でした――背の高い」
「武家か、町人か」
「チラと見ただけで、よくはわかりませんが、遊び人風の」
「そして何処へ逃げたのだ」
「土手の下へ、転げるように逃げました。でも、その辺は真っ暗で、夜分は覗いても何んにも見えません」
「切った髷は、曲者が拾って行ったのだな」
「え」
「そんな隙はない筈だが――」
それは重大な疑問でしたが、お妻も覚束なく、可愛らしい眼をしばたたくばかりです。
「親分」
「何んだ八、袖なんか引っ張って」
「曲者は安宅の弁吉ですよ。やくざ者だが小太刀の名人で、自分の腕に慢じて、武家の髷などを切って見度くなったんですね」
「先刻は俵右門とかいうヤットウの先生だと言ったじゃないか」
「ヘエ」
平次と八五郎は、お妻の茶屋を出ると、衣紋坂を下って、五十間を門並に、大門前までいろいろの事を訊ね廻りました。髷切りの曲者の噂は大変ですが、まことに神出鬼没で、誰も正体を見たという者はありません。
「驚きましたね、親分。こんなわけもない事が、どうしてわからないんでしょう」
「思いの外企らみが深いよ、高札場へ行って、切られた髷を見せて貰おう」