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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁

青空文庫

思わぬ下手人に正面から襲われて、手向いする隙もなかったのでしょう。

沢屋の番頭の喜八郎は、年配の男ですが、腹の底からの江戸の町人で、こんな忌わしい事件に関係を持つ筈もなく、八五郎からいちおうの説明を聴いただけでは、平次の腑に落ちないことだらけです。

「あ、銭形の親分さん、御待ち申しておりました。主人は飛んだ災難で、私どもまで途方に暮れております」

落目になったとは言っても、番頭の喜八郎、手代の佐吉、伊太郎などを従えて、取込み最中の店に働いています。仏間の次に主人の部屋があり、雇人たちは二階へ、お勝手口には下女のお徳が住んでおり、ささやかな離屋には総領の大三郎がいる筈ですが、身体が悪くて籠っているので、何んにも知らなかったと言うのです。

平次はその中から番頭の喜八郎を呼びました。

「番頭さんも見物に行ったというのか」

「ヘエ、年甲斐もございません、――尤も私ばかりでなく、手代の佐吉も、伊太郎も、小僧の良松まで出払ってしまいました。店の方は小間物の商いで、昼頃は至って暇でございます」

「下女の何んとか言うのはいる筈だが」

「相模女で、お徳と申します、これは年も取っておりますし、女だてらに見物にも参りませんが、お勝手に残っただけで、昼の支度で忙しかったことと思います」