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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《橋の上の女 ――銭形平次傑作選2(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,573 字 · 178 頁

青空文庫

「親分、変なものがありましたよ、さいしょはお団子にしてあったか、水の中にあっても大して濡れてはいませんね」

八五郎の差出すのを、平次は手に取って見ました。浅ましい濡れ手拭ですが、どこかに血の跡のような赤いものの付いているのを、平次は見のがす筈もありません。

「八、これは血の跡だよ」

「エッ」

「水へ浸しておけば、いずれは消える筈だったんだ。曲者が人を刺した道具を拭いて、水へつけておくのは、考え抜いたことだ。が手拭が水の中でほぐれる前に、俺たちは見付けたのだ、どこかへ引っかかっていたんだろう」

「その手拭はどこから来たんでしょう」

「田舎縞の羽織を着た、覆面の客だ、そんな人はないか、八」

「そんな野郎は、江戸中には三万人もいますよ」

「一々当って見るわけにも行くまい、その客の下足を見なかったか、姐さんはそんな事にぬかりはあるまい。勘定を払う客か、値切る客か、只呑みの客か、下足を見ただけで見当は付くだろう」

平次は妙なことを聞きました。下足一つで人柄や懐具合を鑑定する術は、江戸の昔から、お茶屋と宿屋の姐さんの特技と言って宜いでしょう。

「そう言えば変でしたよ、小料理屋の部屋から、欄干を見物するだけあって、身なりに似合わず、立派な履物でしたよ、南部桐――いや茶色の――会津桐とか言うんでしょう、百何十里も運んで来た、深山の良材