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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

この夜おそく民弥は板倉様のお長屋――自分の住居へ帰って来た。

せっかくめぐり逢った親の敵の、三十郎を討ち損じ、無念残念に思ったが、どうすることも出来なかったので、住居へ帰って来たのであった。

自分の部屋へはいって見た。

と、どうだろう人形箱がない。

「や!」

とばかり驚き顔色を変えたが、なお押入れや戸棚などを探した。

ない!

人形箱はどこにもない。

萩丸の書いた宥免状、紀州表で捕えられた、同志十数人の生死にかかわる、大切至極の宥免状を、隠して置いた人形の箱!

それがないのだ!

それがないのだ!

民弥は卒倒しようとした。

(もしや使僕などが気を利かせすぎて、あらぬ所へ仕舞ったのかもしれない)

こう思って使僕を呼んだ。

「ああその箱でございましたら、姉小路のお殿様が、人をして担がせて先刻どこぞへ、運ばせやりましてござります」

と、こう忠実な使僕は云った。

「ナニ姉小路様が人をしてどこぞへ?」

いよいよ民弥は仰天し、すぐに姉小路卿のお部屋へ行った。

卿はまだ寝てはいなかった。

「人形箱なら心配せんでもよい」

と、姉小路卿は長閑そうに云った。

「お前も知っている梶子という婦人、あれが先刻やって来て、そういう人形でありましたら、妾も明後日京へ参りますゆえ、妾が持って参りましょうとな、大変親切に云ってくれたので、ではお願いいたし