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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁

青空文庫

三十郎はヒヤリとした。

四人の者の物腰や言葉に、みなりとそぐわないものがあり、話し合う言葉に不穏の個所があった。

(紀州藩の密偵ではあるまいかな?)

それで急いで店を出たのであるが、その四人がつけて来ていた。

(危険だ)

と三十郎はそう思い、一筋の横道へ不意に反れた。

それからもう一つの露路へ反れ、尚、もう一筋の露路へ反れた。

それを足早に歩いて過ぎ、小広い通りへ現われた。

大丈夫だろうと振り返って見た。

四人の男はついて来ていた。

(これはいけない)

と三十郎は思った。

(彼らはお城下の案内に通じた、この城下の奴ばらなのだ。俺は不案内の他所の者だ。つけられたが最後まけそうにもない。ヨーシその儀なら!)

と決心し、わざと今度はソロソロと歩み、寄って来るのを心待ちに待った。

一つの辻を曲がろうとした時、背後からつけて来た四人の男が、にわかに走って寄って来た。

(問答などする必要はない。問答などをしている間に、顔の痣を見られたらおしまいだ。……一人を不便ながら叩っ斬り、驚くところを逃げてやろう)

三十郎はこう思って、走り寄られても動じなかった。

「ご浪人しばらくお待ちくだされい!」