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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《猫の蚤とり武士(ねこののみとりぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 頁
と、梶子の顔を優しく眺めた。
「ご親切にありがとうございます」
こうは梶子は云ったものの、
(そんなお年寄りの老婆心で、そのようなご注意いただかなくとも、妾にはちゃんとした心づもりが、とうの昔についているのですよ)
と、心では思っているのであった。
「恋をいたして家庭をつくる、これが女の身としては最大の幸福――とわしは思うのだがのう」
「はいはいさようでございますとも」
「それが失敗に終った女は、生涯どうにも不幸らしい。……そのよい例が簾子姫でな」
「鷹司様のお妹ご様の、簾子姫でござりますのね。……恋のお相手は伊豆守様で。……」
「ということになっているが、今度この地へやって来て、頼宣卿にお目にかかり、いろいろ私的のお話や、昔話などいたしているうちに、そうでないことを知ってのう」
「まあまあさようでございますか」
「松平伊豆守様はご自分だけで簾子姫を、恋しておられただけじゃそうな」
「片恋だったのですね、お気の毒な」
「中頃伊豆守様もそれを知られて、ご断念なされたということじゃ。――簾子姫の恋しているそのお方が、大変お偉いお方だったのでな」
「どなた様なのでございます?」