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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
――後嵯峨このかた、九十年もの間、幕府の鼻息を恐れて、いちいちそれに問うて来たなど、愚の限りぞ」
との、御見解の下に、
「歴代は知らず、朕は朕だ」
と、即位と共に、もうその頃からひそかな睥睨を、おもちだった。
在位十年は、すぐ過ぎていた。約束の退位期限である。じつに、あっけない。
が、皇太子邦良(亡兄、後二条の御子)とすれば、待望の季節であった。しきりに密使を関東へやり、早くも後醍醐の譲位を暗に策動しだした。
後醍醐は、暗愚でない。よく知っておいでなのだ。
それのお答えには、十年すぎても、頑として退位の御様子すらなかった。――そのうちに正中ノ変。ひきつづいて、皇太子邦良が世を去られた。
奇貨措くべし、とはそのさいの御心中ではなかったか。
後醍醐は、わが第二皇子の世良親王を、皇太子に推そうとした。だが北条幕府では、「ゆめ、油断ならぬみかど」と、警戒していたことである。断乎として反対した。
「御交代の約を反古にはなりますまい。次の皇太子は、持明院統より挙げるのが御順序である。――後伏見天皇の御子、量仁親王こそ、おふさわしい」
いやおうなく、それは実現となった。