輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁
この年の夏は陽気がおくれて、六月なかばでも若い衆たちの中形のお揃い着がうすら寒そうにみえた。宵宮の十四日には夕方から霧のような細かい雨が花笠の上にしとしとと降って来た。
踊り屋台は湿れながら町内を練り廻った。囃子の音が浮いてきこえた。屋台の軒にも牡丹のような紅い提灯がゆらめいて、「それおぼえてか君様の、袴も春のおぼろ染……」瀧夜叉がしどけない細紐をしゃんと結んで少しく胸をそらしたときに、往来を真黒にうずめている見物の雨傘が一度にゆらいだ。
「うまいねえ。」
「上手だねえ。」
「そりゃほんとの役者だもの。」
こんな褒め詞がそこにもここにも囁かれた。
お玉さんの家の人たちも格子のまえに立って、同じくこの踊り屋台を見物していたが、お玉さんの阿母さんはさも情けないと云うように顔をしかめて、誰に云うともなしに舌打ちしながら小声で罵った。
「なんだろう、こんな小穢いものを……。芸は下手でも上手でも、お祭りには町内の娘さん達が踊るもんだ。こんな乞食芝居みたいなものを何処からか引っ張って来やあがって、お祭りも無いもんだ。ああ、忌だ、忌だ。長生きはしたくない。」
こう云って阿母さんは内へついと引っ込んでしまった。