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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁
雨
わたしたちの宿舎のとなりに老子の廟があって、滞留の間にあたかもその祭日に逢った。雨も幸いに小歇みになったので、泥濘の路を踏んで香を献げに来る者も多い。縁日商人も店を列べている。大道芸人の笙を吹くもの、蛇皮線をひく者、四つ竹を鳴らす者なども集まっている。
その群れのうちに蛇人――蛇つかいの二人連れがまじっていた。おそらく兄弟であろう、兄は二十歳前後、弟は十五、六であるが、いずれも俳優かとも思われるような白面の青年と少年で、服装も他の芸人に比べるとすこぶる瀟洒たる姿であった。
兄は首にかけている箱から二匹の黒と青との蛇を取出して、手掌の上に乗せると、弟は一種の小さい笛を吹く。兄は何か歌いながら、その蛇を踊らせるのである。踊ると云っても、二匹が絡み合って立つぐらいに過ぎないのであるが、何という楽器か知らないが悲しい笛の音、何という節か知らないが悲しい歌の声、わたしは云い知れない凄愴の感に打たれて、この蛇つかいの兄弟は蛇の化身ではないかと思った。
雨
満洲は雨季以外には雨が少ないと云われているが、わたしが満洲に在るあいだは、大戦中のせいか、ずいぶん雨が多かった。