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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁
半七招介状
その文芸倶楽部の誌上に思い出話を書くにつけて、今更のように月日の早いのに驚かされます。(昭和2・8「文芸倶楽部」)
半七招介状
明治二十四年四月第二日曜日、若い新聞記者が浅草公園弁天山の惣菜(岡田)へ午飯を食いにはいった。花盛りの日曜日であるから、混雑は云うまでも無い。客と客とが押し合うほどに混み合っていた。
その記者の隣りに膳をならべているのは、六十前後の、見るから元気のよい老人であった。なにしろ客が立て込んでいるので、女中が時どきにお待遠さまの挨拶をして行くだけで、注文の料理はなかなか運ばれて来ない。記者は酒を飲まない。隣りの老人は一本の徳利を前に置いているが、これも深くは飲まないとみえて、退屈しのぎに猪口をなめている形である。
花どきであるから他のお客様はみな景気がいい。酔っている男、笑っている女、賑やかを通り越して騒々しい位であるが、そのなかで酒も飲まず、しかも独りぼっちの若い記者は唯ぼんやりと坐っているのである。隣りの老人にも連れはない。注文の料理を待っているあいだに、老人は記者に話しかけた。
「どうも賑やかですね。」
「賑やかです。きょうは日曜で天気もよし、花も盛りですから。