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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁

青空文庫

鳶

但し俗に「北鳴り」と称して、日光方面から押し込んで来る雷雲は別物である。(昭和11・7「サンデー毎日」)

鳶

去年の十月頃の新聞を見た人々は記憶しているであろう。日本橋蠣殻町のある商家の物干へ一羽の大きい鳶が舞い降りたのを店員大勢が捕獲して、警察署へ届け出たというのである。ある新聞には、その鳶の写真まで掲げてあった。

そのとき私が感じたのは、鳶という鳥がそれほど世間から珍しがられるようになった事である。今から三、四十年前であったら、鳶なぞがそこらに舞っていても、降りていても、誰も見返る者もあるまい。云わば鴉や雀も同様で、それを捕獲して警察署へ届け出る者もあるまい。鳶は現在保護鳥の一種になっているから、それで届け出たのかも知れないが、昔なら恐らくそれを捕獲しようと考える者もあるまい。それほどに鳶は普通平凡の鳥類と見なされていたのである。

私は山の手の麹町に生長したせいか、子供の時から鳶なぞは毎日のように見ている。天気晴朗の日には一羽や二羽はかならず大空に舞っていた。トロトロトロと云うような鳴き声も常に聞き慣れていた。鳶が鳴くから天気がよくなるだろうなぞと云った。