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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁

青空文庫

」

長い堤を引返して、二人は元の浅草へ出ると、老人は辞退する道連れを誘って、奴うなぎの二階へあがった。蒲焼で夕飯を食ってここを出ると、広小路の春の灯は薄い靄のなかに沈んでいた。

「さあ、入相がボーンと来る。これからがあなたがたの世界でしょう。年寄りはここでお別れ申します。」

「いいえ、わたしも真直ぐに帰ります。」

老人の家は新宿のはずれである。記者の家も麹町である。同じ方角へ帰る二人は、門跡前から相乗りの人力車に乗った。車の上でも話しながら帰って、記者は半蔵門のあたりで老人に別れた。

言問では団子の馳走になり、奴では鰻の馳走になり、帰りの車代も老人に払わせたのであるから、若い記者はそのままでは済まされないと思って、次の日曜に心ばかりの手みやげを持って老人をたずねた。その家のありかは、新宿といってもやがて淀橋に近いところで、その頃はまったくの田舎であった。先日聞いておいた番地をたよりに、尋ねたずねて行き着くと、庭は相当に広いが、四間ばかりの小さな家に、老人は老婢と二人で閑静に暮らしているのであった。

「やあ、よくおいでなすった。こんな処は堀の内のお祖師さまへでも行く時のほかは、あんまり用のない所で……。