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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁
「第一番は投げ節の親分」
お組はそっと四方を見ました。匕首のことから話が妙になって、小三郎はもう其処には姿を見せなかったのです。
「それから?」
「御浪人の阿星右太五郎様」
「お園を追い廻して居るという噂があったな」
「平野屋の若旦那は、お園さんを怨んでは居ないが、邪魔にはして居ましたよ。もっとも許嫁のお夏さんは、心から怨んで居たようで」
「そんな事かな」
「お新さんだって、お円さんだって、お園さんを怨んで居ないとは限りません、町内の若い男を皆んな手なづけて、狼の遠吠みたいな声を出させるんですもの」
お組はチラリと鋒鋩を出しました。
「何んだとえ、狼の遠吠で悪かったね、そう言うお前こそ、案山子に魔が差したようなのを教えて居るくせに」
母親のお槇は我慢のならぬ顔を次の間から覗かせるのです。
「もういい、仏様の前だ、お互に喧嘩はたしなむことだ」
平次はもう一度、この女同士――老いたると若いのとの喧嘩を引分けなければならなかったのです。
「親分」
何処かを漁って歩いたらしい八五郎が、縁側から顔を出した。
「何んだ、八」
「変なことを聴込みましたよ」
「?」
「あの大夕立の真っ最中に、平野屋の若旦那の金之助が、お園に逢いに来たらしく、濡れ鼠になって、此処から帰って行ったのを見た者がありますよ」