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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

「どれ/\」

筵を取って見ると、紛れもなくそれは、吾妻屋の手代の佐太郎で、その精力的な身体や、ちょいと良い男に変りは無く、濡れ鼠になって着崩れて居ても、渋い好みの袷などは、水死人には勿体ないようです。

「おや、ひどい傷だが」

死骸の後頭部のひどい傷は、石か何んかで殴ったものでしょう、柘榴のように割れて、水にふやけて居りますが、これをやられてから、水に投り込まれたらしく、身体に水死人らしい特徴は一つもありません。

「山谷堀から流れて来たのかな」

八五郎でした。

「昨夜の上げ汐で、下の方から押し流されて来たのかも知れない」

それはいずれにしても、昨夜のうちに水に投げ込まれた事は間違いもありません。

「懐中物は?」

「百も持っちゃ居ませんよ、抜かれたんですね」

番人は忌々しそうです。

「ところで番頭さん」

「ヘェ/\」

嘉七はあわてて振り返りました。ひどく萎びた中老人ですが、吾妻屋の先代から勤めて居る白鼠で、着実そうなことは此上なしです。

「昨夜吾妻屋から出た者は無いのかな」

平次の問は当然でした。

「一人も出たものはございません、御新造様は早くからお休みになりましたし、米吉さんは二階へ、私と春松は戸締りを見廻って、その下へ休みました。