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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

「そうでしょうか」

娘の美色は、セレナーデを奏する塀外の騎士達ばかりでなく、肉身の親までも白痴にして居る様子でした。

平次はこの愚かしき親を見放して八五郎に手伝って、何彼と世話を焼いて居る、養子の与茂吉を相手にして見る気になりました。

「飛んだお世話で――」

などと、この華奢な息子型の男は、平次を迎えました。

「お前さんも、昨夜何んにも聴かなかった方の口かな」

平次は諦めた調子です。

「いえ、子刻過ぎでしたか、妙な音を聴いたように思います」

「妙な音?」

「何処かで人間の悲鳴を聴いたように思います。それから、どたりという恐ろしい音と」

「待ってくれ、人間の悲鳴の方が先だつのかな、確かに」

「間違いございません――私はよっぽど起きて見ようかと思いましたが、若い者の喧嘩は毎々のことですし、つい、そのまま寝てしまいました」

「お嬢さんは、大変な評判のようだが、お前はそれをどう思って居なさる?」

「さア、どう思ったところで、致し方もございません。」

与茂吉は諦め切った姿でした。そうかと言って、此家から飛出しもならず、怪しい蜘蛛の糸に繰られて、お預けを喰いながらジッとして折を待って居るのでしょう。