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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁

青空文庫

駒三郎にもそれくらいの遠慮はあったのでしょう。

「一体、当座の払いというのはいくらあるんだ」

「これだけでございます」

駒三郎の出した書付を見ると、愚にもつかぬ諸払いがざっと十二三両、それも出入りの人足の手間や、酒屋米屋の払いなど勘定してあるのです。

「これが万両分限の瓢々斎の残した借金かい」

「ヘエ――」

「地所や家作もうんとあるということだ。こんな無法なことをしなくたって、諸払いの恰好はつくだろう。庭石一つ、掛物一本売っても十二三両の始末はつくじゃないか」

「ヘエ――」

駒三郎は正に一言もありません。下男の元助は、醜い顔をひん曲げて「それ見た事か」と言いたい様子です。

そんな事をしているうちに、ガラッ八は小さい水門を抜いて、池の水を干しました。深さ三四尺、たった五六坪ほどの池はみるみる綺麗に水を抜かれて、よく手の届いた底を見せます。

「何にもない」

ガラッ八は少し物足りない様子でした。

「なきゃなくていい、――どれ」

平次は駒三郎を追いやって、池を念入りに覗いてみました。蓬も菖蒲も芽を吹かない池は、岸の草まで、冬枯れのままで、何の変哲もなく底をさらしているのです。