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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

平次は房楊枝を井戸端の柱に植えて、手水鉢に水をくみ入れながら、こう振返りました。

「あの女が殺されましたぜ、親分」

「どの女だ」

「飴屋のお徳が、今朝ドブ板の上へ四つん這いになっていたのを、屑屋の清吉が見付けたんで」

「そいつは大変だ」

平次は大急ぎで顔を洗うと、着換えもそこそこ、鳥越の平助長屋へ飛びました。

「寄るな寄るな、下手に顔を出すと、掛り合いだぞ」

町役人と番太が、警戒の声を涸らしている中へ、平次と八五郎は息せき切って駆け付けたのです。

「あッ、銭形の親分さん、ちょうどいいところへ、八五郎親分さんも御一緒で――」

平次はそれを掻き分けるように、長屋の裏へ廻りました。

「あッ」

物馴れた眼にも、その惨憺たる有様にたじろぎます。お徳は後ろから頸筋を深々と切られて、半分開けたドブ板に手を掛けたまま、碧血の中に崩折れていたのです。

刃物はよく切れそうな菜切庖丁が一挺、これでやりましたと言わぬばかりに、死体の側に。

「これはどこのだ」

平次は取上げました。

「ヘエ、――私の家ので、世帯を畳む人の払い物の中から、使えそうなのを残しておいたんで」

屑屋の清吉は神妙そうに顔を出しました。