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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

お願いというのはここだよ、おっ母ア」

「…………」

「この節はすっかり怯えてしまって、この界隈には猫の子の祝言もねえ。ぐずぐずしているうちに、相手が見切りを付けて、六人の花嫁を纏めて殺めるとか――そんな事はないまでも――、遠国にでも持出されたら手の付けようがねえ。ここでもう一度相手から仕掛けさせて、動きの取れぬ証拠を握るためには、たった一つでもいいから祝言が欲しいんだよ」

「…………」

「俺の眼の前で花嫁を掏り替えた相手だ。平次が嫁を貰うといったら、万に一つも黙って見ているはずはねえ。お静坊に、幾度も危ない思いをさせちゃア気の毒だが、一番花嫁になって誘拐されて、曲者の巣を探って貰うわけには行かないだろうか」

折入っての頼み、男の額には冷汗さえ浮べておりますが、あまりの事に、母親は返事のしようもありません。しばらく胡麻塩になった首を襟に埋めて、何を考えるともなくぼんやりしてしまいました。

「親分、そんな事でお役に立つなら、どうぞ私を使って下さい」

祝言をしてとは言いませんが、お静は顔を上げて、平次よりはむしろ、母親の心持を測り兼ねた様子でこう言いました。

「お静、何を言うのだえ、お前」